【AMED事業◎クローズアップ】ミトコンドリア先制医療_挑戦的な課題に挑む!AMEDムーンショット事業プロジェクト紹介編①
ムーンショット目標7「2040 年までに、主要な疾患を予防・克服し 100 歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」を目指す、AMED(えーめど)が推進する「ムーンショット型研究開発事業」。 “長生き”というキーワードは多くの方が関心をお持ちだと思いますが、高齢化社会でもより多くの方が人生を楽しめるような“健康で長生き”を実現するため、AMEDは9つの研究開発プロジェクトを推進しています。
今回はその内の一つ、「ミトコンドリア先制医療」について迫ります。
ミトコンドリアってそもそも何?
“ミトコンドリア”という単語は聞いたことがある人も多いと思いますが、長寿に関係しているということはご存じでしょうか。
AMED研究開発統括推進室基金事業課でこのプロジェクトを担当する大島正裕さんは、「普段意識していないと思いますが、ミトコンドリアは皆さんの身体にも存在しているのですよ! ミトコンドリアは身体を構成している細胞の中にある小さな器官です。身体に必要なエネルギーを作るという重要な働きをしています」と話します。
リハビリや創薬にも。ミトコンドリアが長寿のカギ!
ミトコンドリアは人の身体のほとんどすべての細胞の中に存在する小器官で、食べたものなどからエネルギーを作り出す役割を担っています。このミトコンドリアの機能調節メカニズムと加齢の関係を一元的に解明し、リハビリや食品開発、創薬に役立てようというのが、東北大学大学院医工学研究科の阿部高明教授が進める「ミトコンドリア先制医療」です。
この研究を始めたきっかけについて、阿部教授は「健康寿命を延ばすためには健康と要介護の中間である“フレイル”と呼ばれる状態を改善する必要があると思い、そこで我々はミトコンドリアに着目しました。ミトコンドリアは我々の身体の中のエネルギーの90%以上を作り出す小器官で、これが傷むことによりパーキンソン病やアルツハイマー病、がん等の疾患が発症したり、あるいはその原因に関わることが知られています。また、我々の研究では、これらの疾患には腸内細菌やその代謝物も関係していると考えています。こうしたことから、奇想天外と言われるかもしれませんが、腸内細菌やその代謝物と身体の細胞の中にいるミトコンドリアが何か連絡(コミュニケーション)しているのでは、というのが研究のスタートでした」と話します。
AMED事業をはじめとするこれまでの研究成果を
ムーンショット事業でさらに発展
阿部教授はこれまで、ミトコンドリアの研究は文部科学省の橋渡し研究事業やAMEDの難治性疾患実用化研究事業、革新的医療シーズ実用化研究事業の支援で実施し、腸内細菌の研究はAMEDの橋渡し研究による医師主導治験とそれを発展させた創薬基盤推進研究事業で新規腎不全治療に関する研究開発の一環として腸内細菌の研究を行ってきました。また、AMED循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業では海外と連携しながら糖尿病腎症対策を、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業では感染症対策を行っています。さらに宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して、宇宙フライトにおける加齢研究にも携わっています。
阿部教授はこの様に、AMEDが支援する各種事業を中心に様々な事業の中で研究を行い、今回、それらの研究成果も踏まえ、本プロジェクトに取り組んでいます。
あらゆるデータを解析し、加齢や疾患に影響する要因を調べる
阿部教授は、「老化研究は世界的に進んでいますが、わからないことはまだまだたくさんあります。そこで私たちは、寿命の短い動物から寿命の長い動物までを用いて、寿命と関係するメカニズムを解明しようと、統合的な研究を行う体制をAMEDムーンショット事業で作っています。さらに宇宙飛行の加齢に対する影響も調べています。また、呼気、血液、尿、便など患者さんからすべての生体試料を集め、これらの生体試料の特徴を見出すマルチオミックス解析※1を行います。人工知能(AI)も活用しながら、ミトコンドリアと腸内細菌・代謝物の関係がいかにして年齢が重ねられていくことに影響を与えるかを調べ、創薬等につなげることを目指しています」と話し、そのためのデータ収集と分析方法の重要性も研究のポイントとしてあげています。
すでに実用化を見据え、研究開発を推進!
この研究が目指す将来像として、「様々な身体の不調について、原因となるミトコンドリアの不調をいち早く、さらに身体に負担を与えない方法で発見し、それに対する適切な治療・運動・食事を行うことにより、100歳まで健康に暮らせる健康寿命を達成したい」と阿部教授は語ります。
本研究開発プロジェクトでは、阿部教授らが発見したミトコンドリアにおけるATP※2の産生効率を高める化合物(MA-5)を、ミトコンドリアに障害をきたした疾患であるミトコンドリア病の治療薬として開発するための第1相臨床試験をすでに開始しています。試験は順調に進捗していて、終了後には第2相臨床試験を開始する予定です。
プロジェクト担当の大島さんも、「本プロジェクトでは基礎から臨床まで幅広く研究が実施され、さらに治療薬候補のMA-5も開発されています。ムーンショット目標をぜひとも達成してほしいです」と今後の研究開発への期待を語りました。
次回は、身体の一部分へ遺伝子を導入して身体が形作られてくる胚や胎児と呼ばれる時期に近い状態にする “組織の胎児化“をテーマにした、AMEDムーンショット事業の研究開発プロジェクトをご紹介します!
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